終の車を考える(細工こまごま)

 巷では「終の車」論議が盛んだ。ポルシェに始まってジャガーやベンツ、ロータスやフェラーリ等々。「終」と言うより一度は乗ってみたい車あるいは自分の乗った一番の車あるいは車歴自慢という事なのだろうか。そしてそれを手に入れたり死ぬまでに一度は乗ってみたい、コレクションしたいという方やただの思い出話しの投稿が多いような気がする。

 移動手段は車しかない田舎暮らしでは「終の車」というと運転免許証返納まで乗れる車と考える。財布に負担が少なく普段使い出来て何より自分の気に入った車、それを免許返納まで出来る限り長い間、乗りこなす事ができる車、これを私は「終の車」と考える。

 若い頃はコロコロ変わる流行のデザインと性能を見比べて乗り換えてきたのだが、買い替えに倦んだ40代の頃にCCV(Cross Country Vehicle)誌(主宰:石川雄一氏)を読んで正に究極の車、終わりの車に出会った。以来四半世紀に渡ってCRR(Clasic Range Rover)を乗り継いできた。200Tdiディーゼル、V8ガソリンそして自分でエンジンを載せ替えて作り上げた300Tdiディーゼル。私はこれを「終の車」としよう。

⒈日課になった医者通いにも使えるサイズ感(カローラクラスの車長と車幅)

⒉徘徊で道路を外れてもどこからでも戻って来られる常時四輪駆動(4WD)

⒊お尻の肉が薄くなっても体に優しい絨毯のような足回りと座席

⒋手指が震えていても真っ直ぐ走れる操縦装置(ハンドルの遊び)

⒌耳が遠くてエンジン音の強弱が分からなくなっても目で解るタコメーター

⒍坂道発進や咄嗟の機転が効かなくても安心の自動変速機(4速AT) 

⒎腰が曲がったり身長が縮んでも前が見える運転席(コマンドポジション)

⒏暴走老人にならないための自動速度一定装置(オートクルーズ)

⒐高齢ユーザー必須の下手クソ棒(代わりのボンネットタワー)

⒑霞んだ目にも足元を明るく照らしてくれるカーテシライト

11.弱ってきた足で踏んでも確実に止めてくれる電気アシストブレーキ(ABSも)

12.年金生活でも維持できる単価の安い燃料のエンジン(ディーゼル)

13.ヨレヨレで足が上がらなくても乗り込める踏み台(オートステップ)

14.消し忘れがなく安心してトンネルに突っ込める自動消灯装置(オートライト)

15.老人性視野狭窄でも後ろが見える後方鏡(デジタルインナーミラー)

16.パニックになっても状況を覚えてくれているドライブレコーダー

17.カンに頼らなくても電子系の故障箇所を教えてくれるOBD(On Board Diagnostics)

 基本的にCRRは何も足さない何も引かないで完成された車のはずだが、製造終了後30年の時を経た今では技術的に進化した部分や陳腐化し不要な物も出てきている。これらを鑑みて細部を自分の気にいるように改良しながら免許返納まで乗っていくとしよう。

 ドアを開けた時に点く足元灯とドアが開いていることを後続車に知らせる赤い警告灯。パドルランプとかウエルカムランプ、それに赤いのはドアランプとかエッジランプと言うそうだ。100インチベースのレンジローバーは基本はフロントドアにしか付いていないが後ろドアでも開いていることを後続車に知らせる赤い警告灯などは安全面から重要だと考える。

 終活の一環で部品取車(LWB)の後ドアを処分しようと見回していたらランプが2個付いている事に気がついた。LseやLWB(Long Wheel Base)とかバンプラ(banden plus)と呼ばれる胴長レンジはいわゆるリムジン(サルーン)なので後席に乗るお客様をより安全に守るという考えのようだ。

 滅多に後席に人を乗せる事のない300Tdiレンジだが、冬の間はスキー以外はヒマなので細々とした細工をしてみる。と言うことでお金をかけずにランドローバー純正品で300Tdiレンジの後ドアにランプを付けて見た(24.01の作業)

夜間照明

 ずーっと前にメーター周りやヒーターパネル辺りの夜間照明をLED化したのだが、実際にトンネルや夜間に走ってみると操作レバーの位置がどこにあるのか見えない。どうも元々のレバーに照明がないので周りが明るくなりすぎて見えなくなったようだ。鉄道模型用の極細LED照明が格安だったので工夫して取り付けた。

  終活の一巻

 根っからの田舎者なので物が捨てられない。ほぼ理想型で終の車のつもりの300Tdiレンジなのだが、暇ができるとまだまだやる事があるような気がする。

 有効活用を図る上では純正品を使うMAレンジとWAディスコをバラしたので中古ながら純正パーツが結構ある。

 オートステップは出来上がったのだが、いざ使ってみると運転席側はいらない気がしてきた。メインスイッチをつける事した。床下に放りっぱなしのリレーを固定するついでにシート下にある不要な燃料ポンプのイナーシャースイッチ(ディーゼルは機械式)を取り去り、キルスイッチの空いた穴に純正のスイッチを取り付けてみる。

車検整備2025

 フロントガラスの割れに対応している間に継続車検が途切れた。とは言っても仮ナンバーで持ち込んで受検できるのだが、2ヶ月ほど空白期間ができた。その間、若干暖かくなってきたので前から気になっていたリアブレーキディスクを新調し、ブレーキフルードのエア抜きをしたうえで検査に向かった。ヘッドライトは左目の内側に水滴が付いていたので拭いてから向かったのだが案の定やっぱりバツが出た。こんな事もあろうかとコイト製のライトを持参していて正解だった。交換のうえ検査場近くの整備工場で調整して貰ってようやくマルが点いた。  

フロントガラス

 300Tdiレンジのフロントガラスが割れた。自分の不手際で割ってしまった。ワイパーモーター修理の際、ボンネットヒンジのバネに弾かれたコジリ棒がガラスに当たって割れたのだ。

 元々こういう時のためにズーっっと前に椅子無しの部品取車を購入しパーツは綺麗にむしり取って保管してあるのだが、部品取車は左ハンドルの後期バンプラ仕様だったので合わないものや不要なものは売却して生活の足しにしていた。フロントガラスは前期型とは違うことはわかっていたが、こちらは売却は大変なので畑の車庫に放ってあった。KA(93年型)まではゴムシールを車体に嵌め込んだ上でガラスを嵌め込む方式だしMA(95年型)後期はガラスを車体に直接貼付る方式で縁のゴムは本当のモール、唯の飾りである事は知っていた。

 ただここに来てまさか本当にフロントガラスが必要になるとは思いもよらなかった。赤貧の年金生活者には純正新品パーツの熱線入り前期型ガラスの数十万円はするであろう出費は痛い。そもそも入手経路さえネットでは見当たらない。交換の記事も見当たらない。やはりプロの世界の話なのだろうか。

 せっかく今までDIYにこだわってきたので、いい機会だ手持ちの後期型が前期型に流用可能か真剣に考えてみよう。畑の車庫の整理の意味も含めて後期型純正ガラスが前期型ゴムシールに使えるか検討してみた。

 割れの入った前期ガラスの寸法と後期型のガラスの寸法はおおよそ同じように見える。パーツリストの品番は当然ながら違うがガラス自体のサイズは前期、後期とも同じと信じよう。違いは後期型が縁取りが黒くなっている事。熱線入りの純正品であることは同じ。コネクタの違いなどは瑣末な事。せっかく持っている物を使わない手はない。

 いざ友人に手伝って貰うべく電話しようとした日の朝、信頼できる情報筋(SNSだが)でディスコ1(0では無い)のガラスをレンジの物に交換した投稿があった。その情報ではディスコの貼り付けガラスの方が若干だが短いとのこと。糊つけ部分があるので貼り付けガラスの方が長くなると思い込んでいたが逆らしい。

 慌てて再度精細に測ってみると高さは同じだが部品取車の貼付式ガラスの方が上と下(長辺)が2センチほど短い。困った、情報によると嵌込式ガラスを後期型ボディには取り付けできるが逆は不可とのこと。その通りだったのだ。裏技的にガラスや内装を全部外してAピラーに鉄板を溶接するか、イヤイヤ下辺はハードダッシュの受けも兼ねているので貼り付けは困難なのだ。完全にアウトだ。

 こうなったら最後、LR仲間の大先輩にすがるしかない。星の数ほどある膨大なコレクションから前期物のガラスと手持ちの後期型とを交換して貰うしかない。無理やり頼み込んで遥々神奈川県まで取りに行ける事になった。純正オリジナルとDIYにこだわってきた者としては(中古だが)純正トリプレックスのガラスで揃えられるのが嬉しい。

DIY(一人)で半日かかってなんとか取り付けることが出来た

 実はこの話は「割れのないガラスをすんなりとDIYで交換しておしまい」とは行かなかった。2月中旬の大雪の日に神奈川県で貼り付け式ガラスと嵌め込み式ガラスを交換して貰ってその1週間後に助っ人と二人で意気揚々と嵌め込もうとしたところ取り付け手順を誤り、最後の最後でパリンと2つに割れてしまった。またまたやってしまったのだ。

 その後、大先輩の大御所に平身低頭頓首再拝して、車体から自分で取り外し不用心なので割れたガラスをその部品取車に取り付けることを条件に再度某隠れ家に通う事になった。最初に割ってしまってから2ヶ月近くが経過し、300tdiレンジは車検が切れてしまったので、サンバーTT2で高速や首都高を走ってようやくにして取り付けることができた。

 今度は慎重に車庫内で一人で時間をかけて取り付けた。とは言っても半日で完了したが。