エアコン考(CRR)

 KAまでのレンジローバーのエアコンは実は冷房だけのクーラーである。ヒーターブロワーとは別に独自にブロワーがあって、クーラーの風は顔に当たる部分いわゆるフェイシアに直接繋がっている。曇り止めのためエアコンを入れてヒーターの温度を高く設定してもフェイシアからは冷風しか出てこない。温度調整はできないのだ。温風をフェイシアに切り替えるとフェイシアから温風とクーラーの風がミックスされそうだが切り替えレバーの調整がかなり難しい。クーラーの風と外気とミックスされるだけである。切り替えは単純にフェイシアに外気が入るか室内の冷気が循環するかだけの感じである。

クーラーの風は5から入る。これをDに切り替える事ができるか?

 そもそもカーエアコンなるものの温度調整はどうやってするのか?解説書を見るとヒーターの温度調整イコールエアコンの温度調整のようで単純そうだ。

 車庫の棚に保管してある後期型レンジ(MA)の一体型エアコンユニットをじっくりと観察してみると、一番前(エンジン側)にエバポレータ、その後ろに空間があって横からブロワの風、そして吹出し口側にヒーターマトリックスと言う順番である。

 そこである時ふと思いついた。前期型のCRRでも純正のヒーターブロワーを取り去り、どうにかしてクーラーの風をこのブロワー部分に送り込んでやればヒーターの部分で温度を調整できて、いわゆるエアコンにできるのではないか。エアコンでなくただのヒーターにするにはコンプレッサークラッチを切ればいいのではないだろうか。課題はフェイシア部分に風を送る方法である。それが解決すればユニット自体はいじらなくてもいいはず。ブロワーの配線と配管だけの問題なのではないだろうか。

 91年型レンジの空調の配線図を自分なりに理解した限りではヒーターブロワーを外してエアコンブロワーからの風をそこに入れて、関連するスイッチやリレーを外しただけでよさそうだ。工作だけでいい様だ。

 ただ、93年型の実配線は若干異なるみたいだ。眺めてみると基本は外気導入で、室内循環との切り替えはソレノイドで行なっているようだ(エンジンの負圧を利用)。このスイッチがフェイシアとデフの切り替えレバー(左側縦)に連動していて操作レバーはない。つまりソレノイドのスイッチが入ると内気循環になるという事。ここを変えればよさそうだ。

 彼の国ではエアコンの必需性は薄いのかはたまたエアコンの便利さを知らないのだろうか。考えてみればレンジの場合は前も後ろも熱線入りのガラスなのでボタン一つで一瞬で曇りを解消できるのだ。でも、梅雨時にボタンを押すと暑すぎるのでは?、彼の国に梅雨は存在しないのか?。

 日本でレンジが発売された頃、該車に乗るような人々は夏の間に避暑に行く時にしか利用しないので冬にエアコンで曇りを取ったり温めるという必要性は感じなかったのではないだろうか。確かに日本でカーエアコンが普通になったのは90年代に入ってから。それまではオプションもいいところで単なる高級装備でしかなかったのだ。軽自動車にエアコンなんて考えもつかなかった。

 しかしこの程度のことはこれまでに誰か考えついて実践しているのではないだろうか。随分と時間をかけていろいろ調べて見たが実践例はなかなか出てこない。仕方がない自分で実践してみるしかないようだ。

 ということでヒーターマトリックスの修理のついでに実践してみた。

最近のホームセンターは家庭用エアコンのコーナーが充実しているのでこれを使ってやってみた。

93年型レンジのヒーターユニットをバラしてみると温度の調整レバーの端にコードが繋がっている。どうもエアコンのサーモスタットに繋がる温度制御用のポテンショメーターのようだ。一定の温度以下の時はクーラーが切れる装置のようだ。でもコネクタはサーモスタットに繋がっていた気配はない外したままだったようだ。ディスコの時代になるといわゆるエアコンになっているのでこの装置はない。

ヒーターコアの修理に併せて純正エアコンもどき化、レトロフィット化の3つを同時に行う事になった。