持病の治療

 50年近く前、職場の独身寮で貰ってしまった水虫。大事に持ち続けて足の爪に入っていたが、最近になってようやく治療に入り出した。こちらは半年かかって完治に向かっているが、30年以上経過したCRR(Clasic Range Rover)はあちこち持病が出だした。

 200Tdiレンジの時にもたびたび手を焼いたトリップメーターのリセットボタン。どうかするとスパッと0にリセット出来るのだが、何回やっても中途半端な数字になっている事が多い。それでも10kmの桁、100kmの桁で上手く繰り上がってくれれば良いのだが、とうとう繰り上がらなくなって340のままで動かなくなり、高速道路を走っていて規則的なカチャカチャ音が気になり出した。いよいよ本腰を上げて修理する事にした。と言ってもただスピードメーターを取り出して精密ドライバーを差し込んで000にするだけ。

 パワーウインドECUの不調:パワーウインドーの不良はハンダが浮いて電気が通ったり通らなかったりが原因らしい。ま、30年以上使い続けていると日本車であろうと何処かしら悪くなってくるはずなので持病とは言えないかも知れない。ただ日本車の場合は30年以上も使い続けるのは珍しいし、悪くなった場合はアッシーで交換してしまうのでいわゆる持病とはされないのかも。

 300Tdiレンジのリアウインドスイッチは半年程前から時々しか機能しなくなった。雨が続いた後や寒かった日にはどうかすると動くのだが下手すると雨が降っても下がったままで走り続けることになる。左右とも揃って動かなくなるので後部窓への電源供給リレーの不調には間違いないのだが、93年型はフロントウインドガラスのワンタッチダウン機能がついた関係でいわゆるECUボックスの中にリレーが入っている。要はBOXの中のリレーのハンダが割れているはずなのだ。

 後ろの窓ガラスは締め切ったままでも特に問題はないが、折角ある機能は使い切るのが信条。冬の間の暇つぶしに修理することにした。ただ、構想を練っているうちに今度は助手席横のガラスが下がらなくなった。こちらは以前からゆっくりとしか上がらなかったのでグリス切れが原因で負荷がかかり過ぎてモーターかレギュレータのローラーが壊れたようだ。併せて修理に向かう。

マフラー交換

 夏に下に潜って見た時に気がついたマフラーの穴。針穴程度に見えたが、臨時収入が残っていたのでオーソリティにディーゼルレンジ用のステンレス製を探してもらった。純正マフラーは斜め横出し式らしいが、英国中探してもステン製は見当たらないとの事。ディスコ用でも支障はないので難ありの傷物新品を割安で購入していた。冬にスチールマフラーのままで走ると塩カルでひどい事になるので、チラチラ雪の舞い始めたこの時期に意を決して交換する事にした。

 自分では3年余りしか使っていないが元々は’98年型ディスコの物なので、これまで無交換とすると通算25年以上、距離にしてみれば18万キロ超。穴が空いてしまうのも無理はない。

 ワンピース物なのでコイルスプリングをリアアクスルから外して取り出そうと画策していたが取り付けブラケットを外した途端に錆穴がある所から自然に折れて落ちてしまった。思ったより穴は深く全体に回っていたようだ。購入した新品のステンの方は2ピース物なのでコイルは外さなくてもよかった。

相棒

 長い間DIYにこだわってきたが、溶接はこれまで何度か挑戦したもののとても難しくて満足のいく出来にはならず半分諦めかけていた。それでもいつかは再挑戦と思って、離れの部屋にエアコンを設置した時に電気工事店に頼んで車庫まで単相200Vのコンセントは引いていた。

 秋のLRM(Land Rover Meeting)に参加した際、大御所に教えて貰った新製品の溶接機。Buddy(相棒)というらしい。調べてみるとセール期間中とのことで年金生活者でも手の届く値段だった。200Vと100Vを自動で切り替えてくれる優れ物の方も同じ値段だったので購入してみた。後で知ったが色違いでカーキ色や迷彩柄も選べたらしい、ちょっと残念なことをした。

 何か試用できる物がないかと探したら40年以上前のオーディオラックでコの字型の鉄の角パイプを見つけた。鉄材屋さんで追加の3㎝角パイプとLアングルetcを購入して切った貼ったで溶接台を作ってみた。ようやく自分でも使えそうな相棒に出会えた。

増車(?)

 今年の夏の工作。暑過ぎて何もしたくなかったので地下の書斎に籠って作業に勤しんだ。孫の遊び用にと買ってあった1/24のプラモを作ってみたのだがチャチ過ぎるので自分のコレクションにすることにした。涼しくなって地上に出てようやく日の目を見た。

ヒーターバイパス装置を付ける

 エアコンは安定して機能するし暇も出来たので暑くても出かけるようになった。冷風は爽やかに出て来るので快適なのだが時折どこからかドカッと熱の塊がやって来るようになった。窓際かバルクヘッド辺りの感じである。窓は閉まっているのに外気の熱が室内に入り込むような感じだ。助手席に乗る妻は特に暑さは感じないそうだ。手であちこち探ってみても特に熱い所は無いがハンドル下や窓ガラスを熱の塊が移動している感じでジワーッと暑いのだ。

 CRRは常時ヒーターコアに熱くなったクーラントが循環している構造である。このレンジを入手した時はヒーターコアが割れていたので、誰かがエンジン後端部で水道管でバイパスさせていたのは前にどこかで話した気がする。あの時、車内への温水切り替え装置があれば夏にエアコン無しでも涼しいかもと考えて格安汎用小型水路切替器は買ってあった。ただ300Tdiエンジンを載せたら、エンジンとバルクヘッドの間が狭過ぎてスペースを探せずにいたし車検取得以後夏にはあまり運転する機会がなかったので後回しにしていたのだった。

 CRRのヒーターユニットはコンパクトで気に入っているのだが何しろ設計が古い。エアコンなど無いヒーターオンリーの時代の賜物なのだ。ソフトダッシュと呼ばれる後期型のCRRのユニットをバラしたことがあるが全体を覆っている樹脂が厚くて熱は外部には漏れにくい構造だった。KA(93年型)までのハードダッシュのユニットの側壁は熱伝導率が高い鉄板だし樹脂は後期型に比べて限りなく薄い。暖房のことしか考えていない時代の設計なのである。

 LEDライトや暗くなると自動的に点灯するオートライト、USBやBluetooth対応のオーディオetcのCRRに欠けている数少ない弱点を自身の創意工夫で改良して快適に走れるようにする。それも最初から付いていたように限りなく純正風でさらに経費をかけずに手間をかける。この楽しみこそが私がCRRをいじり続ける理由でもある。

 今夏は早くから遅くまでとりわけて暑く、エアコンも調子がいいのであちこち運転していたら上記のとおりヒーターバイパスの必要性を感じたので意を決して作業にかかってみた。果たして効果の程は?

PWM かレジスターか?SDGs

 CRRの風量調整用の抵抗器(レジスター)は高価なのによく壊れるらしい。Tdiレンジもガソリンエンジンだった頃から、2段階しか調整できなかったので格安PWM(Pulse Width Modulation)にしてシームレスで風量調整をして快調に走っていた。エアコンも今年(’23)になって冷媒を入れたのでPWMを追加して風量調整しながら快適に遠出を楽しめるようになった。

 ところが夏になって東京に向かうべくエアコンを入れて久しぶりにETCを通る時、ゲートが上がらず急停止したら危うく後続車に追突されそうになった。係員が飛んできて言うには通信不能とのこと。首都高のETCでもゲートが上がらず一般ゲートで通った。振り返ってみると冬にスキーに行く時のETC通過時、通信エラーが出て無理矢理ゲートを通った事があった。あの時は帰りのバーはスムーズに開いたので、朝は大型トラックのすぐ後ろについていたので電波が遮断されたのだと考えていた。そのあと春まで数回ETCゲートを通ったが問題はなかった。

 電子工作の解説書にはPWM装置はパルス波長を調整するいわゆる発振機なのでモーター等のノイズ対策を万全にするよう書いてある。私の使ったのは格安(数百円)PWMなので高周波雑音が出てETCの通信不能を引き起こしたのではないかと考えた。今思ってみると最初に通信不能になった時はスキーに行く為朝早かったのでヒーターを入れていたかも知れない。無事通過できた時は過ごしやすい時期や時間帯だったのでヒーターのスイッチは切っていたのかも知れない。

 シームレスの風量調整はスムーズで良いのだが運転中の操作にはクリック感は必要ということを感じていた。年金生活者にはレジスターの高額支出は痛手なのだが、色々模索していたら純正で未使用のレジスターがブロワモーターについていた事を思い出した、それも2個もあった事を思い出した。これで費用をかけずに4段調整でPWMからレジスターに戻せる目処が立ったので某日実施した。やはりシンプルイズベスト。ランドローバーの設計を信じよう。純正が一番。

  1. レンジの純正機能や部品は最大限利用するのが信条
  2. 純正のハーネス、装置は原価をケチってはいないはず(?)
  3. レンジには純正(?)で未利用のブロワー用抵抗器(レジスタ)がある
  4. 壊れたモータのもあるので2個も家にあった
  5. 風量調節にはクリック感が大事
  6. 折角考案した4段階の風量調整は大事
  7. 結局リレー1個の追加で風量調整が4段階になった

300Tdiレンジの真空引き

 クーラーからエアコンシステムに変更する作業は2年前に終了して、昨(’22)年は更にフレア接続が不安だったので無くすよう加工したのだが、実は冷媒はまだ入れていなかった。真空引き用のポンプやマニホールドゲージセット、それにHFC134aガスやオイルは随分前に購入してあったのだが何せ真空引きなる作業は生まれて初めての事、ポンプから煙が出たりしながら、何度試みても本に書いてあるような真空状態を保つことができずに躊躇していたのだった。

 また今年も暑い季節が近づいてきたので重い腰を上げて電装屋さんに診てもらいに行ったら一瞬で室内から大々的に漏れているとの指摘を受け自宅へ舞い戻った。

 ヒーターユニットを外すのは誠に億劫な作業で、フレア接続を無くしたのも室内側のパイプは2度と触りたくないと言う理由で確実に接続したつもりなのだが、あろう事か再々再度外すことを余儀なくされた。ユニットを外してよくよくパイプを観察すると指摘の通りエバポと自作した延長パイプとの接続部分がしっかりと締め込んでいないように見える。

 エバポ側の高圧と低圧の出口は出ている長さが違うのだが、エバポから延長したパイプを外してみると、エバポ側の長短の差と延長パイプ側の高圧と低圧パイプの長短の差が合致しない。硬いパイプ同士ではここに差があってはどちらかがしっかりと奥まで締め込みできないわけだ。つまり、エアーが漏れていたのはアルミ溶接部分からの漏れではなく、単純にワンオフ自作の延長パイプの長さの計算間違い、長さを測ってR12用のネジ込み部とR134a用のねじ込み部分の溶接をお願いした自分の責任であった。平身低頭電装屋さんに再度頼み込んで高圧側のパイプを短く切って溶接してもらった。2千円の追加料金で済んだ。ありがたい。

パワステボックス

 あちこちスキーにも行って快適に走っていた300Tdiレンジだがある時突然、車庫の床に赤い液体がべっとり。パワステフルードが漏れ出したのだ。パワステボックスは元元のレンジについていた物なので走行距離にすればたかだか8万キロ程度。ただ、レンジのパワステは据え切りを重ねると途端に悪くなるらしいので使い方を誤ったか、それとも30年の経年劣化と冬の寒さでゴムが硬くなりヤラれたか。尋常な量ではないので直ぐに対処しなければならない。こういう時のためにディスコのパーツがあるのだが残念なことについ先日BOXが調子悪いという友人に譲ってやったばかりだ。友人の悪い方のBOXを貰い受けてオーバーホールをする事も考えながら慌てて電話して譲った物の安否を尋ねると、悪かったはずのBOXは自然治癒したので未交換のままとの事。ボールジョイントが固着して先端だけ付いたままのディスコのBOXを頼み込んで返却してもらった上でなんとか交換完了。

 その後、漏れている方のBOXをオーバーホールして予備に回す事にしたが案の定ドロップアームを外すのに苦労した。10数年前に200Tdiレンジの物をOHした時はストレートの店長に頼んでダブルハンマーの技で外してもらったのだが今回は結局SSTを購入して外した。ただBOX側のアウトプットシャフトが長過ぎてSSTが入らなかったのでグラインダーで切り詰めた上で取り外した。

さらば200Tdi

300Tdiレンジがほぼ理想の形で出来上がったので次なる課題は休眠中の純正200Tdiレンジのレストア。

だが、考えてみると自分はまもなく古希、終活を考えなければいけない年齢だ。それに300Tdiでの全国行脚の夢もあるし未知の整備が発生するかも知れない。UAZ顔サンバーやNAロドスタも年老いて行くばかりで益々手がかかるようになるだろう。課題をこなす余裕はないのだ。

Tdiレンジ2台持ち(93年型KA,Aegean,AT:MT,200:300Tdi)の構想は諦めて熱意ある若者に夢を託すことにした。

 10万キロ超を母国で過ごした後、日本で20万キロ余りを走り抜いた200Tdiレンジ。15年ほどを特別豪雪地帯で過ごしてから休眠に入って早や7年。よくよく見るとフレーム後端はさらにサビ落ちてボロボロだ。ドナーのディスコのフレーム後端を自分で切り貼りして強度を保つつもりだったがモチベーションが続かず力尽きたのだ。エキスパートの手によってレストアが完了し、いつの日にか再び一緒に並ぶことができるのだろうか。

さらば200Tdi    また会う日まで